2014年4月10日木曜日

第72回 「WE製真空管アンプ」

さてさて、3巡目に入りました。
次第にディープな世界に入るのがコワイですが、仕方ないので入りましょう。

前回のお話(「早春の三曲」)で、僕が音楽を聴くのが好きであることはお分かりと思いますが、音楽を出来るだけ「いい音」で気持ち良く聞きたいと願い、オーディオの泥沼にもかなり足を踏み入れています。その中でもアンプ(音を増幅する機器)の大部分が実は真空管式なのです。

今では電気器具のほとんどは半導体を使うものになり、真空管は「前世紀の遺物」だと思っていませんか?実用機器は効率重視で、半導体が主体なのは当然なのですが、ただひたすら「いい音」を求めるこの世界では、楽器用のアンプも含めてまだまだ真空管式が幅をきかせています。

半導体では、電子が通過し増幅される場所が固体の中であるのに比べ、真空管は妨げられるもののない真空状態の空間を電子が飛ぶ、というのがアンプの「増幅素子」として優れている点である、と信じる人も多いのです。最近になってあらたに真空管ないし、そのアンプを作るようになったメーカーもいくつかあるのが現状です。

1999年の夏にふとしたきっかけでウエスタンエレクトリック(WE)300Bという米国製の真空管を使ったキットアンプ(組み立て式)を作ったのがはじまりで、この更に泥沼な世界に足を踏み入れることになっちゃいました。

なにしろ当時持っていたマッキントッシュ(コンピューターとは別メーカー)という有名メーカー(これも米国製)の半導体アンプと聞き比べ、そのあまりの世界の違いに驚愕したのです。

何しろ真空管アンプの方はアマチュアの初めて作った、ごくごく単純な回路の出力10Wのアンプ。
一方マッキントッシュの方は「世界の・・・」といっていいメーカーの一流品で出力は150W。

でも圧勝したのは真空管君の方だったのです。

ジャズのライブ盤を聞いて、その録音したクラブのタバコの煙くさい(?)空気まで再現してくれる実力には、驚きを通り越して、あきれたものです。アンプを作って最初に音を出したときに、思わず「おーい、おーい」と、タンノイオートグラフを聞いた五味康祐さんのように(なんの比喩か分からないと思いますが)おもわず家内を呼んでしまいました。

それ以来、自宅のオーディオのアンプ部門はほぼ100%真空管式となり、今では10台ほどの真空管アンプが生息しております。(怒←家内)

ここで間違えて欲しくないのは、真空管=ノスタルジックな音、では全くない!!ということ。切れ味鋭い音から、真綿のように柔らかな音まで、自由自在に再現できるのが特徴です。再現が特に難しいとされる、人の声や弦の音色を精妙にreproductしてくれる能力をもっているのです。

また、真空管ってすぐ「切れる」でしょ?というのも大きな間違い。
古い電球とは違って、上に出てきたウエスタンエレクトリックというメーカーの製品など、稼働寿命数万時間以上といわれ、数十年使ってもびくともしないものがたくさんあります。ただし機械がとてもhotになるのはやむを得ず、冬は暖房機器としても利用できます。(強がり)
うちに帰り、まず真空管アンプに「火を入れる」。この瞬間が最高ですね。
透明なガラス越しに見えるボーッと点灯した真空管の穏やかなあかりが、疲れた頭と体をじんわりと癒やしてくれる。どうですか?一度、音楽好きなあなたも経験してみませんか?

院長 武田