2018年5月30日水曜日

第208回 一生のお願い

幼少の頃、欲しい物や頼みごとがあると「一生のお願い」と言って親を困らせた記憶がある。さすがに年を重ねると言わなくなった。が、先日、久しぶりに「一生のお願い」をした。

2020年といえば…東京オリンピックがあります。楽しみですね。
でも、その前に、来年2019年にラグビーワールドカップが日本で開催されます。
ラグビーワールドカップは、夏季オリンピック、サッカーワールドカップに次ぐ規模となる世界三大スポーツイベントのひとつです。そのラグビーワールドカップの歴史上、初めて日本で開催されるのです。

僕、CARPが好きです。そのCARPの次にラグビーが好きです!
ラグビーワールドカップが日本で開催される…行きたい!観戦したい!

東京オリンピックは東京近郊でしか競技がないけど、ラグビーワールドカップは日本全国で試合がある。ラグビーの盛んな地域はもちろん、復興の意味も兼ねて、釜石や熊本、大分でも試合があります。残念ながら広島ではありません。
それどころか、事前キャンプ地にも入っていない(残念!)。

では、チケットはどうすれば入手できるか?
ラグビー繋がりの友人に聞くと、関係者には先行発売されているらしい。
じゃあ、関係者にお願いすればいい!と考えた。

生化学検査(LDHとかコレステロール等)を行う装置がある。当院の検査室にあるのは「東芝メディカル」の生化学自動分析装置。ご存じと思いますが、東芝メディカルは親会社の会計不祥事のため「キヤノン」に売却されました。
東芝とキヤノンは両方ともラグビートップリーグに属す強豪チームなのです。

東芝(現キヤノン)の担当者にお願いしてみた。
「東芝もキヤノンもラグビー強いよね。ラグビーワールドカップが2019年に日本であるけど、チケット手に入らないかな?もちろん代金は払いますよ」
担当者曰く
「知り合いに(ラグビー)関係者がいますから。聞いてみますよ。たぶん大丈夫ですよ。どの試合が希望ですか?何枚必要ですか?」

嬉しい!こんないい返事が聞けるとは思ってもみなかった。
「日本代表の試合はムリだろうから、大分か名古屋であるニュージーランド代表の試合をお願いします!」
担当者「わかりました。また連絡します!」

楽しみに連絡を待った…1週間後連絡が入った
「いろいろ関係者にあったっています。もうしばらくお待ちくださいね」
と中間報告である。
期待が膨らむ。待ちますよ。ワールドカップは2019年ですから。
さらに1週間後、今度は直接来院してきた。
「すいません。色々あたりましたがムリでした。こちらから応募して下さい」とラグビーワールドカップ公式HPのチラシを渡された…

コネクションでの入手をあきらめ、公式サイトから購入しようと思い、HPを見ると

チケットの価格が、高い!めちゃくちゃ高い!
試合するチームや指定席のカテゴリーによって違うけど、日本代表の試合だとAカテゴリーで1席が50,000円だ!そして決勝戦となるとAカテゴリーで1席が100,000円です。高い!
観戦するのは止めようかな?と思った。でもね、
「4年に1回じゃない! 一生に1回だ!」
なんですよ。高いと思ったチケットだけど、サッカーのワールドカップでも同じくらいの金額だし、テニスのウィンブルドンセンターコートだと50万円らしい…一生に一度。観戦しようと決めた。

チケットを入手するには?

まず初めに、「先行抽選販売」。セット券(チームパックとスタジアムパック)の申し込み期間は2018年1月19日~1月26日。これはパック券なのでかなり高価。僕にはムリ。しかも、これは日本ラグビーフットボール協会に登録してあるチームのコーチやスタッフやメンバーズクラブ会員、公式ファンクラブ会員しか申し込めないのでパス。

次にあったのが「開催都市住民先行抽選販売」。つまり試合がある地域の人に優先的に販売しますよというもの。申し込み期間は2018年3月19日~4月12日。これも僕には買えない。購入する権利がないのだから。

じゃ、いつなら購入できるの?となる。
一般販売(抽選)が2018年9月19日~11月12日。ずいぶん先だ。

そうだ!開催都市の住民に購入してもらえば良いのだ。
(懇意にしている)T先生にお願いをした。
T先生は抽選で当たる確率を上げるため、家族全員分を登録し申し込んだ。
その結果…

12試合も当選! スゴイ! 
その中には、3位決定戦、準決勝2試合、決勝戦もある! 最高!

前述のとおり、チケット代金は高いので、全試合には行けません。2試合だけお願いしました。ニュージーランド代表の試合と決勝戦。決勝戦(チケット)はかなり高いけど、1生に1度なので…一緒に行きましょう!と

チケットは入手できたので…後はお金を工面しなければ…
で、妻に言いました。

一生のお願い…。

臨床検査室 中村

2018年5月20日日曜日

第207回 鬼女に魅了する神楽

 ある日、山陰にドライブに行った時のことです。
浜田市の道の駅に寄った時、笛と太鼓の音に誘われて観たのが「神楽」でした。
小さな神楽団でしたが、鬼棒を床に叩きつけ軽快に舞っていました。
私が生まれたのは小さな漁師町でした。祭りでは、沖に櫂伝馬や押し船、陸には神輿に大名行列がありましたが「神楽」はありませんでした。神楽を初めて観たのですが、何だか田舎の祭りを思い出し懐かしかったのを覚えています。

 それからしばらくして、「広島県民文化センター」で、「広島神楽」定期公演に誘われたのをきっかけに足を運ぶことになりました。街と週のど真ん中、「神楽」を楽しむ水曜の夜を満喫していました。神楽を観た後は、美味しい食事とお酒(ビール)を頂き、神楽がメインかそのあとの「飲み」がメインかわからなくなってはいましたが、かなり通っていました。

 神楽の語源は、「神座」(かむくら)が転じたとされています。神座は「神の宿るところ」「招魂・鎮魂を行う場所」を意味しています。宮廷で行われる「御神楽」と民間で行われる「里神楽」があり、私が楽しんでいたのは「里神楽」であったようです。
物語の流れを掻い摘んで言うと、村人を困らせる鬼を正義の味方が刀をもって退治する。
何といってもの魅力は、鬼女によるお面の早変わりはスリル満点。そして大きな鬼の面をつけゴージャスな伝統的な衣装での舞は圧巻です。八調子の新舞が最も好きです。

 今年は4月4日から12月26日の38週間です。福山に移住(?)して、観賞できないのが少し残念です。
看護部長 西中

2018年5月10日木曜日

第206回 「ランドセル」のお話し

 このシリーズも遂に七巡目に突入。以前に書いたものを読み返してみると、ずいぶん好き勝手な話をしています。しかし、「振り返るが、反省はしない」をモットーに、更に好き放題な話をしてしまいましょう。

 今回は、このタイトルを見て、果たして内容を想像できる方が何人おられるでしょうか?「孫にランドセルを買ってやった爺馬鹿話か?」いやいや、そうではありません。例によってdeepなaudioのお話しです。現在の我が家では一階のリビングの隣の部屋を、勝手にaudio roomとして使っていますが、そこでは三台のスピーカーが、それぞれ専用の真空管アンプを従えて稼働しています。この三台が一軍。熱心なaudio maniaであれば音が悪くなるとして複数のスピーカー同居は御法度ですが、そんなことにはおかまいなしです。ここから脱落したヒトタチは、(一部お店にドナドナされる以外は)二階の寝室などに移動し、二軍としての生活をしておられます。(敬語)

 この三台のうち、最もお年を召しておられるのが、ウエスタン・エレクトリック(WE)の755Aというユニット。なんと1940年代末生まれという、ボクよりも年上のヒトなのです。このユニットは径8インチ(約20cm)という小径のコーン紙一枚で全ての音域を再生する、いわゆる「シングルコーンスピーカー」という最もシンプルな形の、いわばaudioの原点といえるものです。このユニット自体、もともとはaudio用のハイファイ・スピーカーとして開発されたのではなく、アナウンスなどのPA用や、モニター用として誕生し、映画館や放送局、電車や軍用の放送に使われたもの。従って人の声を明瞭に伝えることが主目的ですから、再生音域はナローで、定格では70Hzから13kHzとされていますが、実際に再生してみると、何とも見事な音楽を奏でてくれるのです。

 このユニットが我が家にやって来たのは2006年のことで、東京の代々木に位置する、とあるマンションの13階にある某店で見つけました。このお店はマニアの間では知る人ぞ知る有名店ですが、何しろ普通のマンションにあるので、ドアを開けて入るのは相当勇気がいりました。中は巨大なスピーカーホーンが林立し、たくさんのスピーカーユニットがゴロゴロ転がり、「魔窟」状態。でも優しい店主に色々と音楽を聞かせてもらい、話をしていわゆる618Cタイプと言われる「標準箱」に入った755Aが我が家に嫁入りしたわけです。この箱は良くできていたのですが、なにしろ我が家のスペースでは(なにしろ三台同居体制なもので)少し大きく、響きは良いのですがやや音調も緩く感じていました。そうこうしているうちに、2011年になって、長野の安曇野にある某家具工房が手がけた755A 用の「箱」を手に入れることが出来ました。これはもともと、WE社が許可して他社に作らせた場合に与える「KSナンバー」のついたスピーカーボックス(KS12046)の精巧なレプリカモデルで、本来はビルの構内放送や、会議室の壁に掛けるための木箱です。このため前面が少し傾斜しており、上端は緩やかにカーブして、前から見るとまるでランドセルのような形をしています。このため日本のマニア達が「ランドセル」と呼んでいたと言うわけです。(やっとタイトルが出たー)大きさは約45x30x23cmくらいで、コンパクト。オリジナルを一度だけ見た事があるのですが、これはやはり1940年代製で、見事に乾ききった合板のニス(?)のツヤも美しく魅力的でしたが、値段の方も「魅力的」でため息をついたのみでした。このレプリカはさすが日本の家具職人の作、と言うべきか精巧そのものの作りで、見事にあのオリジナルランドセルの雰囲気を再現していると感じました。

 このレプリカランドセルに、オリジナルWE755Aをねじ止めし、内部配線もやはりオリジナルのWEケーブルで結線し(なにせユニットとコネクタの配線だけで単純そのもの)、音出しをした時の嬉しさは今も忘れません。やはり古い録音の音楽が向いているようですが、クラシックもジャズもボーカルも、とてもこの単純な構造からは考えられない完成度の「音楽」を奏でてくれるのです。さきほど書いたようにこのユニットも箱も、元々は「ヒトの声」を再生するためのもので、この中音域の豊かさと、独特の高音域の音色が一度聞いたら忘れられない音楽を再生してくれるのでしょう。

 このランドセルにまつわるエピソードで忘れられない事が一つ。かつて我が家には愛犬Snowという、イングランドゴールデンレトリバーがいて、ボクがソファー(一人用だが少し広め)で音楽を聴く時に、時には膝の上ないし横に座って一緒に聞いていたのですが、ある時、一緒にJutta Hippというドイツからアメリカに渡ったジャズピアニストのライブCDをこのランドセルで聞いたことがありました。このディスクでは、冒頭にこのピアニストのデビューに力を貸した、有名なジャズ評論家のレナード・フェザーという人のアナウンスがあります。ヒッコリーハウスというステーキハウスでのライブで、”Hello!  This is Leonard Feather.”と言う声がはっきりと部屋に響いた瞬間に、寝ていた(いつも寝ている)Snowの両耳がぴくぴくっと動いたのです。あれっ?と思ったけど、見るとどう見てもよく寝ている。ふーん、と思いつつ、しばらく忘れていて、後日同じCDをかけると、やはりぴくぴくっとするのです!そこで今度は違うスピーカーに代えて再生してみると(同じくらいの音にして)、全く動くそぶりなし!ホントの所はどうだったんだろう?今となっては(当時も)Snowに確かめるすべはないですが、やはりヒトの声がとても「それらしい雰囲気で鳴った」のは間違いありません。これ以後、このCDは必ずランドセルで再生している、というのは誰にも内緒の話です。

 長々と益体もない話をしてしまいましたが、とても楽しかった事を思い出したので(自分勝手に)よしとしましょう。それでは今回のお話しはこれにて。
病院長 武田(内科)