雨の中、広島県立美術館で開かれているゴッホ展に行った。
昨年末「楽園のカンヴァス」という小説に出会って以来、西洋絵画の世界に興味を持ち始めていた私は、著名な作家であるゴッホの作品が一堂に会するという今回の展覧会に、期待をよせていた。
ここで少しこの小説の内容に触れておくと、
ここで少しこの小説の内容に触れておくと、
アンリ・ルソーの幻の絵画をめぐり、大手オークション会社、美術館キュレーター、コレクター、研究者などのそれぞれの思惑、また絵画への愛情が描かれていて、普段公になることのないアートを取り巻く状況が垣間見え、ハラハラしながら一気に読み終えた。
ルソーやピカソなどが生きた当時のパリの状況も描かれていて、お金がない作家は、すでに絵の描かれたキャンバスを購入し、その上から絵を描いていたというエピソードが印象的だった。
再び展覧会について話を戻すと、生で目にするゴッホの筆致、色彩に魅了された。
再び展覧会について話を戻すと、生で目にするゴッホの筆致、色彩に魅了された。
その力強さの中に垣間見えるはかなさにも強く引き込まれた。
ただ一つ疑問に思ったことは、絵画はあらゆる文脈を抜きにしては、鑑賞することはできないのかということである。
ただ一つ疑問に思ったことは、絵画はあらゆる文脈を抜きにしては、鑑賞することはできないのかということである。
キャプションに書かれるテキストは、年代毎の絵画技法の細かい分析など研究者の視点も入り内容は盛りだくさんであった。
が、むしろ多すぎる感もあり説明を読むだけで精力を使い果たし、途中で挫折してしまった。
展覧会を評価するなど私にとって畏れ多いことだが、説明は最小限にして、感覚的に絵そのものをじっくり鑑賞できるような展示にしてほしかったかなという印象を持った。
ゴッホ展の後、地下展示場で、中西繁展をたまたま観ることができた。
ゴッホ展の後、地下展示場で、中西繁展をたまたま観ることができた。
「廃墟と再生」というテーマで、アウシュビッツやチェルノブイリ・それに加えて地震におそわれたフクシマの原子力発電所が圧倒的な迫力で巨大なカンヴァスに描かれていた。
ヒロシマと並びフクシマは現代文明の負の象徴。
いまだに高い放射線量を示す汚染水の問題は深刻である。
しばらく憂鬱な気分で絵の前に立っていた。
以上二つの展覧会をみた感想です。「楽園のカンヴァス」は一読をお勧めします。
以上二つの展覧会をみた感想です。「楽園のカンヴァス」は一読をお勧めします。
老年内科医長 竹原