2013年5月10日金曜日

第40回 「大腸がん検診について」

2007年度厚生労働省人口動態統計によると、がんで亡くなる人は年間33万6290人で全死亡者の3人に1人を占めるとされています。

私は、寺岡記念病院で内視鏡業務を中心に日常診療を行なっております。
便秘、腹部膨満や貧血などを訴えて受診され、大腸がんと診断される患者さんも少なくありません。

今回は、大腸がんに関して検診という側面から考えてみたいと思います。

結腸及び直腸がんを合わせた大腸がんは、部位別がん罹患率及び死亡率ともに、第二位(前者2007年 後者2011年集計)を占めております。しかし、大腸がんは早い段階で治癒した場合、5年生存率は90%以上と、治癒も可能ながんの1つとされています。検診による早期診断は重要と言えるでしょう。

現在大腸がん検診(老人保健法に基づく市町村健診)は、スクリーニング検査(一次検査)として免疫学的便潜血反応(二日法)、異常が認められた場合、精密検査(二次検査)として下部消化管内視鏡検査が行われるのが一般的です。 

免疫学的便潜血反応は、便を検体とする非侵襲的(身体に負担のない)かつ簡便な検査です。40歳以上の人が便潜血検査による検診を毎年受けることで、大腸がんによる死亡確率を60%程度減らすことが証明されています。
しかし、国民生活基礎調査によるとスクリーニング検査受診率は、男性28.1% 女性23.9%と低く、他のがん検診と比べても低い傾向が指摘されています(2010年)。
広島県でのスクリーニング検査受診率は、県全体では17.6% 特に福山市17.0% 府中市11.7%(2011年)と全国平均を下回っているのが現状です。 

大腸がん検診精密検査も非受診により、大腸がんによる死亡の危険率が4~5倍になることが証明されております。しかし、日本対がん協会が2005年に全国支部で行った大腸がん検診の結果では、スクリーニング検査受診者数は212万1425人、うち精密検査が必要と判定された人は13万1247人(要精検率6.2%)、この中で精密検査を実際に受診した人は8万7479人(精検受診率67.6%)と有用性が証明されているにもかかわらずその受診率の低さが指摘されています。 

2011年度当院で行われた大腸がん検診の結果を提示します。

スクリーニング検査受診者は604人。うち精密検査が必要とされた人は32名(要精検率5.3%)、このうち実際精密検査を受けられた人は4人(精検受診率12.5%)と全国検査と比べ精検受診率は約1/5とかなり少ない結果でした。 

がん検診精密検査を受診しない理由として内閣府調査によると、健康状態に自信があり必要性を感じないから 心配な時はいつでも医療機関を受診できるなど無症状であることが前提となる理由が挙げられています(2006年)。症状が出てから診断される場合、治療内容の侵襲(身体への負担)度が高くなる場合が多く、予後が危険になる場合も考えられます。 

加えて大腸がん精密検査受診率低値の理由として、検査の特異性(直腸~結腸の内視鏡検査)、前処置(腸管洗浄)に時間を要することや煩雑さもあると思われます。また以前、内視鏡検査でしんどい思いをされたことを理由とされる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、下部消化管内視鏡検査は大腸がんの前がん病変の1つとされる腺腫の発見や治療も可能であり大腸がん予防という点においても重要であります。
近年は問診により被験者により適した前処置の工夫も可能となってきています。また内視鏡や機器の進歩などめざましく、以前と比べ苦痛のなく短時間に下部消化管内視鏡検査を受けていただくことも可能となってきています。 

検診対象者には検診の意義を理解していただき、まずスクリーニング検査を受けていただく。
医師のみでなく検診業務関係者も検診の意義をよく理解した上で単なる検査の提供だけでなく、被験者の立場に即したamenityや説明の提供を行う。被験者の皆様に安心感や満足感のある検診を受けていただくには、このような検者、被験者間の相互理解が必要でないかと考えています。

参照サイト

http://www.daichougan.info/
大腸がん情報サイト

http://ganjoho.jp/public/index.html
国立がん研究センターがん対策情報センター がん情報サービス

内科 河野