2013年4月10日水曜日

第37回 「早春の三曲」

早くもこの井戸端情報も二巡目が巡ってきましたね。

去年は「早春の三冊」ということで、その頃再読して心に残った三冊の本を紹介しました。今回は僕の大好きなJAZZから、春の曲を3つ選びました。考えてみれば「早春」というのは、2,3月頃のことで、ちょっと時期を外れるかな?とも思うのですが、まあ、この原稿を書いているのは実は3月はじめですし、「早春」という言葉の響きが好きで・・・ということでお許しください。 

JAZZというのはなんだか旋律をひねくり回して、ややこしく難解な音楽、と思っておられる方が多いかもしれませんが、実は「名曲」の宝庫です。その中から、春のタイトルのついたスタンダードナンバーの名曲を選びました。


1) You Must Believe in Spring Bill Evans Trio

ピアニスト、ビル・エバンズの同名の1977年録音のアルバム” You must believe in spring”から、二曲目。
限りなく美しい旋律です。戦慄します(寒っっ)。ビル・エバンズのピアノトリオ曲としては、「ワルツ・フォー・デビー」という超名盤がありますが、気がつくとこちらのディスクがターンテーブルに載っていることが多いですね。このアルバムの録音から三年後にビル・エバンズは亡くなり、死後に発表されたアルバムです。この曲を聞いていると、テンポがゆらりゆらりと微妙に「揺らぐ」のですが、ベースのエディー・ゴメス、ドラムのエリオット・ジグムンドの二人もぴったり息を合わせて「揺らぐ」のです。こんなことはクラシックなどでは考えられないことですが、エバンズは「音楽にはあらかじめ作曲された(決められた)音楽と、ジャズがあるんだ」と語っていました。インタープレイと言う言葉がありますが、三人の心の交流が語られるようなピアノトリオを是非聞いてみてください。 



2) I’ll Remember April(四月の思い出) Sonny Clark Trio 

ソニー・クラークの1957年録音のピアノトリオアルバム、”Sonny Clark Trio”から六曲目。 

ソニー・クラークというのは、前述のビル・エバンズなどと比べると華やかさに乏しく、どちらかというと地味な存在ですが、マイナーを好む日本人ジャズファンのなかでは人気のピアニストです。このアルバムは、ドラムのフィリー・ジョー・ジョーンズとベースのポール・チェンバースという当時最高峰の二人にサポートされて、思う存分「歌って」います。五曲目の「朝日のようにさわやかに(Softly as in a morning sunrise)」が名曲として有名ですが、それに続くこの曲も更に味わい深く、心に残る名演です。この曲は「歌」でもあるので、歌詞がついていますが、それによると「あなたとの四月の思い出がある限り、秋の寂しさをおそれはしない・・・」というような、哀愁に満ちたソニー・クラークのピアノがぴったりの曲ではないかと思います。 


3) April in Paris Count Basie and his orchestra 

最後の曲は、打って変わって“脳天気な”ビッグバンド・ジャズ、カウント・ベイシー・オーケストラによる1955/56年録音の同名のアルバム”April in Paris”から一曲目。

“カウント(伯爵)”・ベイシーは”デューク(公爵)”・エリントンと並ぶ、アメリカのスウィング・ジャズ、ビッグバンド・ジャズの王者です。日本にも何度も来日し、たくさんの熱狂的ファンがいました。なにしろゴージャスな演奏者を揃え、ゴージャスな音で聞くものを楽しませる、ビッグバンドの神髄を表現しているバンドですね。このアルバムを聴くときはアンプのボリュームをぐいっと上げて聞きます!! 



以上三曲、それを収めた三枚のアルバムは、どれをとっても素晴らしい出来ですので、聞いて(買って)損はありません。(ディープなジャズファンには当たり前の物足りない話で申し訳ありませんでしたが)これにて2013年4月のお話は終了です。

院長 武田