2014年6月20日金曜日

第79回 「過去へタイムスリップ」

私の母は、現在一人暮らしをしています。
今年で78歳になります。
遠方でなかなか会えませんが、メールでやり取りしたり、電話をしたりと連絡は欠かさず取り合っています。電話で話し始めるとなかなか話が尽きません。話していると、ついつい時間を忘れてしまい、夫に注意されてしまう事も度々あります。

先日もいつものように、母から電話がありました。

押入れの整理をしていたら、私の小学校の文集が出てきたと言うのです。
母は、文集を読んで懐かしがって電話してきたのでした。

私の小学校の頃の思い出を次々に話し始めました。
私が忘れていた話や、今まで知らなかった話をうれしそうに話しはじめます。

そんな母ですが、最近物忘れをする事が多くなりました。
自分でも忘れないように工夫しているようです。カレンダーが真っ黒になるくらい予定が書き込んでありました。でも、電話では思い出話が嘘のようにどんどん出てくるのです。びっくりしました。

先日、母に会いに実家へ帰りました。
ダンボール箱の中に、私の小学校時代の文集や日記帳がまとめてありました。

懐かしく手に取ってみました。

何十年ぶりに読むのでしょう。
小学生時代に書いた私の直筆の活字がそこにはありました。
400字の原稿用紙に、はみ出しそうな大きな字が並んでいました。
小学校2年「将来の夢」と題した作文に、

「私は花屋さんになりたい」

と書いていました。

友達の作文は、「将来、野球選手になる」「将来ピアノの先生になる」と書かれていました。
読んでいくうちに、小学校時代に戻ったような気分になり、作文を書いている時の自分を思い出してきました。あの時の教室の風景や、作文を考えて書いている自分、友達の顔や担任の先生の顔。懐かしい思い出が蘇ってきました。40年前の自分の頭の中を覗いている気分です。過去へタイムスリップしたと言えばかっこいいかもしれません。茶色のざらざらした紙に印刷され、勿論カラー印刷ではない、友達の手書きのイラストが添えてある、1枚1枚手で折って束ねてホッチキスで閉じて自分たちで手作り製本した記憶もよみがえってきました。

母の記憶力も感心しましたが自分の記憶力も順序をたどれば思い出していくものだとつくづく思いました。そして写真も思い出になるけれど、一生懸命に考えて書いた文章はかけがえのない「その時の自分」そのものだと思いました。

今ここに書いている文章が10年後に読んだら懐かしく思い出されるでしょうか。
これからもずっと母と笑いながら語り合っていきたいと思います。


看護主任 小川 智穂子