2012年4月2日月曜日

第1回 「早春の三冊」

今年度から、当院職員からの情報発信の一つとして、ホームページに一筆書くことになりました。
内容は特に縛りはなく、それぞれの仕事や趣味の話、食べ物やお酒の話、政治談話、日頃感じていること・・・等々、できるだけpersonal な内容としたいと考えています。
まず第1回目は、院長の武田が担当いたします。

次々にバトンタッチしたいと思います。

 「早春の三冊」などとおおげさなタイトルですが、別に早春にふさわしい本を特別にセレクトした、などということではありません。たまたま最近再読して、特に興味深かった本、というだけなのです。

 僕は本が大好きで、常に複数の本を並行して読んでいます。一種の活字中毒でしょうが、この中毒には効く薬もなく、患者は楽しいばっかりなので、特に治療の必要もありません。


 今回は全く脈絡無く、以下の三冊をあげてみました。

1)「喜嶋先生の静かな世界」 森博嗣 講談社
2)「星を継ぐもの」 ジェイムズ・P・ホーガン 創元SF文庫
3)「長いお別れ」 レイモンド・チャンドラー ハヤカワ文庫



読んでおられない方に、「ネタバレ」になってはいけませんので、あまり具体的には書きませんが、それぞれに感じたことを簡単に。

 一冊目の著者;森博嗣氏は某国立大学工学部助教授で、ミステリーの分野で多数の著書を怒濤の如く出版されていますが、これは全く違った内容の、「自伝的小説」です。“理系の研究者はこういう生活をして、こんな事を考えているのか!!”と驚く本なのですが、何しろ登場人物がみんなある意味変人で、大変に魅力的。静かなよろこびと、静かなかなしみに満ちた本です。

一節だけ引用:「一日中、たった一つの微分方程式を睨んでいたんだ。あの素敵な時間は、いったいどこへいったのだろう。」

 二冊目、これはSFの古典で、かなり多くの方が読まれていると思います。壮大な構想をもとに書かれた、三部作(のちに四部作となる)の最初の一冊。月面で、宇宙服をまとった死体が発見され、その死体は5万年前のものと判明する・・・という始まりで、さらに紆余曲折の連続の後、地球人の起源が(も)解き明かされるSFなのですが、そこに描かれる科学・技術についての記載が素晴らしくリアルで、物語の進行にワクワクさせられる数少ない本のひとつでしょう。

 三冊目、これもハードボイルドの古典ですね。僕は最初に十代の頃に読んで強い印象を受けましたが、ある程度年を喰ってから読むとまた一段と味わい深いです。最近村上春樹氏が新訳に挑戦していますが(「ロング・グッドバイ」)、やはり慣れた清水俊二訳のものが落ち着きますね。これを読んだあとは、ついバーでギムレットを注文してしまう人がたくさんいるのでは・・・。

 いずれにしても、読書三昧は良いもので、時間を忘れてしまいます。読書の秋、と言いますが、春も夏も冬も読書には良いシーズンですね。

院長 武田